概要
相続手続きをおこなうにあたって、被相続人が所有していた財産の内容や価値が正確に把握できていないと、手続きをスムーズに進めることができないだけでなく、間違った手続きを選択してしまうこともあります。そのため、どんな相続財産があって、いくらの価値があるか調査する必要があるのです。そこで必要になるのが「財産調査」と「財産目録」です。
財産調査は、「被相続人の所有していた財産を調査する」ことで、財産目録は、「被相続人が所有していたすべての財産を一覧にしたもの」です。財産目録は、おこなう手続き次第で、手続き上、作成する必要のない人もいますが、財産を可視化するために財産目録をきちんと作成しておくことで、相続に関するトラブルを防ぐことができる場合もあります。
財産調査では、被相続人の持ち物を全部調べます。預金通帳、土地・建物の権利証、株券、有価証券、借用書、契約書、生命保険、自動車検査証、美術品などです。そのために、自宅の金庫や引き出し、棚、仏壇など、大事なものを保管していそうな場所を探します。貸金庫の契約をしていることもあります(貸金庫を契約者以外の者があける場合には、戸籍謄本等が必要です)。
金融機関の通帳があれば、預貯金を把握することができます。ただし、記帳していない場合もあるので必ず記帳しに行くか、銀行などの窓口で残高を確認してください。そのとき被相続人との関係を示す戸籍謄本や身分証明書などの提出を求められることがありますので、事前に対象の金融機関に問い合わせてください。あわせて、その通帳に記載された具体的な引き落としや入金、振込などの取引明細から預貯金以外(株式等)の資産や負債の存在が見つかるかもしれません。さらに、金融機関や証券会社と取引があった場合や生命保険などの契約をしている場合は、郵便物からその存在を確認できるかもしれません。また、土地の権利証が見つかるかもしれませんが、既に土地を他の人に売り払ってしまっているのに権利証がそのまま残っているというケースも考えられますので、後述するように登記簿謄本等でチェックする必要があります。
※通帳が見つからない口座があるかもしれませんので、クレジットカード等の明細から、口座の調査漏れがないようにしっかり確認してください(預貯金債権の時効は10年です。10年を経過すると銀行は相続人に対して預貯金を返さなくてよくなり銀行のものとなってしまいます。)。
株式や債券などの有価証券を所有していた場合は、それらを扱っている金融機関や証券会社などに「評価証明書」の発行を依頼します。
不動産については、その不動産を管轄する法務局で不動産登記簿謄本を取得します。不動産登記簿は公開されていますので、誰でも請求できます。身分証明書等は必要ありませんが、1つの不動産の謄本1通に付き1、000円(法務局で購入する登記印紙で支払)の手数料がかかります。ただし、土地と建物は別々の不動産なので、土地の登記簿謄本と建物の登記簿謄本、それぞれ1通ずつ取得する必要があり、手数料は2,000円の手数料がかかりますのでご注意ください。また、名寄帳を閲覧することで、原則として同一市区町村内にある故人所有の不動産を確認することができますので、不動産の詳細が不明な場合などは活用してみてください。
不動産登記事項証明書の取得方法
所得できる場所:法務局
取得できる人:誰でも可
提出書類:申請書
手数料:1通600円
名寄帳の閲覧方法
所得できる場所:市区町村役場(23区内は都税事務所)
所得できる人:所有者、相続人など
提出書類:申請書、本人との関係を証する資料、身分証明書など
手数料:市区町村により異なる
不動産登記簿謄本が取れたら、その権利関係を確認します。あわせて、土地や建物の所在地の市町村役場から、「固定資産評価証明書」を取得しておきましょう。固定資産評価証明書を取得すれば、不動産の価値の目安が分かります。
不動産の権利は所有権以外にも多種にわたり、その種類によって相続財産の評価額が異なります。さらに、他人の権利、抵当権・根抵当権・質権などがついていることがあります。これらの他人の権利が付いているほど不動産の価値は下がる可能性があります。不動産の評価については、かなりの法律知識が必要になってきますので、自信のない方は必ず専門家に相談してください。
そのほかにも保険金、自動車、ゴルフ会員権、賃料債権(貸家、賃貸マンションを持っている場合)、貸金債権(誰かにお金を貸していた場合)、さらに借入などの負債なども調査します。
財産調査が終わったら、財産目録を作成します。
財産目録には、被相続人が所有していた土地や建物などの不動産の評価額、預貯金の額、株式や債券などの有価証券の額のほか、自動車や絵画・宝飾品などの動産の評価額などを記載していきます。そういった「プラスの財産」だけでなく、借金や税金、未払の治療費などの「マイナスの財産」もきちんと調べて、記載しておきます。
相続財産が確定したら、全体を整理しましょう。相続財産の額や負債の有無によって、とるべき手続きが変わってきます。それらの手続きには期限がある者もありますので、速やかに確認しましょう。