遺産分割協議

概要

有効な遺言が存在していて、遺言に相続財産の分け方に関する記載がある場合は、原則として(亡くなった方の最後の意思を尊重した)遺言の記載に従います。ちなみに、遺言が2通以上存在している場合は、内容が相反する部分について、前の遺言が撤回されたものとみなされ、日付の新しい遺言の内容に従います。

遺産は、遺言があればその内容に従い、相続財産を分割します。遺言が2通以上存在している場合は、内容が相反する部分について、前の遺言が撤回されたものとみなされ、日付の新しい遺言の内容に従います。

遺言が存在しない場合は、原則として相続人全員で遺産の分け方を決めます。これを一般に遺産分割協議といいます。相続放棄をした者は、遺産分割協議には参加しません。

遺産分割協議をどのように行うのかについては,特に決まった方式はありません。したがって、どのような方法で行ってもかまいません。実際に集まって話し合いを行うのが一般的でしょうが、電話や書面によって協議することも可能です。

その協議がまとまらない場合には、家庭裁判所の「調停」による遺産分割を行います。それでもまとまらない場合には、「審判」による分割を行います。さらに、審判に納得できないときは「裁判」になります。

遺産分割協議は相続人全員で行う必要があります。行方不明者や未成年者、認知症となったものなども、相続人である以上は関与が必要であり、行方不明者については不在者財産管理人、未成年者については親権者または特別代理人、認知症など判断能力に欠ける者については成年後見人などが本人の代わりに遺産分割協議に参加します。

なお、相続人のうち1人でも協議に参加していない者がいる場合、その遺産分割協議は無効です。そこで,まずは,各相続人に対して,遺産分割の協議(話し合い)を行いたい旨の通知を出すことになります。この通知は,相続人間で争いが生じないような場合には口頭でもよいでしょうが,そうでない場合には,念のため,配達証明付きの内容証明郵便で通知書を送付しておくべきでしょう。万が一、協議が難しい場合は家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てしましょう。

遺産分割について、単純に相続人それぞれの希望により分配する方法もありますが、相続税の申告義務のある人は、相続開始から10カ月以内の申告期限までに行わないと、小規模宅地等の特例や配偶者軽減が受けられません。そのため、場合によっては相続税申告及び相続税の納税まで考慮した分配を行う必要が出てくる場合もあります。相続税申告が必要な場合は税理士への相談をしてください。

他にも遺産を分ける際には、寄与分と特別受益を考慮する必要があります。

まず寄与分とは、亡くなった方の財産の維持または増加に寄与したものについては、相続分算定の際に考慮しましょうという制度です。通常の扶養義務を超えて亡くなった方の財産の維持または増加に貢献があり、かつ、維持または増加との間に因果関係があることが求められます。

次に特別受益とは、相続人の中で亡くなった方から生前に生活の援助などのために贈与を受けた者がいる場合は、その分(特別受益)については相続分算定の際に計算上考慮(持戻し)しましょうという制度です。

寄与分の制度も特別受益の制度も、相続人関の公平を図るための制度です。

遺産の分け方について代表的な方法としては、不動産は妻、預金は長男、株式は次男、というように遺産を現物のまま分割する方法(現物分割)、妻が不動産を相続する代償として、他の相続人に代償金を支払うというような方法(代償分割)、不動産などの遺産を売却してその代金を分割する方法(換価分割)、相続財産を遺産分割協議や法定相続分に応じて共有するという方法(共有分割)が挙げられます。

遺産分割協議によって,相続人間での話し合いがまとまったら,後にトラブルが生じないように,話し合いで決まった内容を必ず書面に残します。これが「遺産分割協議書」です。遺産分割協議書には協議の内容を記載し、相続人全員が実印で押印し、印鑑証明書を添付します。誰が、(相続財産のうち)なにを、どのように(取得)するか、という点について、明確に特定・記載するようにしましょう。遺産分割協議書が2枚以上になる場合は、つながりを証するために養子と用紙の間の契印が必要です。

後に審判や訴訟等の争いになった場合に、遺産分割協議書は有力な証拠となりますが、可能であれば、遺産分割協議書は、公証役場で公正証書にしてもらったり、専門家である弁護士等に作成してもらう方が、誰かが違約した場合に、金銭に関しては、すぐに強制執行等の手続をとることができるなど、後のトラブル抑制力も働きますので、多少手続きが面倒になりますが不安な方にはおすすめです。

一般的な遺産分割協議書のサンプル

相続人間での協議がまとまり,遺産分割協議書が作成できたならば,それを各相続人間で調印し取り交わすことになります。協議書は人数分作成し,それぞれが保管しておくようにします。

公正証書で遺産分割協議書を作成する場合には,相続人が全員で公証役場に赴き,署名・押印をすることになります。公正証書の場合は,相続人のほかに,2人以上の証人も連れて行く必要があります。

遺産分割協議で話し合いをしてきても,話し合いがまとまらないということもあります。場合によっては,一部の相続人がどうしても参加してくれないということもあります。

そのような場合には,遺産分割協議を進めることができません。そこで,遺産分割の裁判手続を利用することができます。調停においても話がまとまらない場合には,審判が行われることになります。審判では,最終的に裁判官が遺産分割方法を決定することになりますが,異議を申し立てることは可能です。