限定承認

概要

限定承認とは、相続を受けた人が、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐという方法です。この方法は、マイナスの財産(借金)の金額がプラスの財産より明らかに多い場合や、わかっていない借金が残っている可能性がある場合などに有効です。

いざ、相続をするとなっても、プラスの財産とマイナスの財産と、どちらのほうが多いのかわからないということは十分ありえます。後になってから多額の借金が見つかり、プラスの財産よりマイナスの財産のほうが多い場合もあります。

しかし、限定承認をしていれば、相続したプラスの財産より多いマイナスの財産の部分は返さなくてもかまわないのです。また、結果的にマイナスの財産よりプラスの財産のほうが多かったとしても、財産はそのまま引き継げます。ですから民法上は、かなり便利な制度といえます。

限定承認を選択する場合も、相続放棄と同じように、相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内に被相続人の住所地の家庭裁判所に申告する必要があります(民法915、民法924)。相続放棄同様に、やはり申し出がないと認めてもらえません。

ただし、相続放棄と違って、限定承認の場合は、相続人の全員が共同で申請しなくてはいけません(民法923)。相続人のうち一人でも反対すれば、他の相続人も限定承認ができなくなりますので注意をしてください。また、相続人のうちの誰かが相続放棄をしていても、その人以外が同意すれば、限定承認の申告をすることができます。

前述だけみれば、限定承認は非常に便利な制度ですが、非常に危険な落とし穴があります。 それは、被相続人(亡くなった人)に対して、財産を時価で相続人に渡したとしてみなし譲渡所得課税がかかるということです。

単純承認の場合、被相続人が取得した状態を相続人が引き継ぎます。 しかし、限定承認をした場合、被相続人が相続開始日にすべての資産を相続人に時価で譲渡したものとみなされ、譲渡所得税が課されます。 譲渡取得税は、譲渡価格(この場合「相続開始日の時価」)から取得費、譲渡費用を差し引いた額に課税されます。そこで、譲渡取得税が発生するものは、時価が上がったとみられる、古くから所有している不動産が中心となります。よって、自宅不動産(住んでいる家)について譲渡取得税が発生することが多いです。なお、住民税は、被相続人に翌年1月1日現在に住所がないため課税されません。また、限定承認は、親族間売買として、居住用財産の3,000万円特別控除などの優遇制度は適用されません。

この譲渡所得税は、被相続人の債務となり、相続税の計算上債務控除の対象になります。 この譲渡所得は、相続人は被相続人の所得税について、準確定申告をもって所得税の申告・納付をします。

被相続人に対しての所得税は債務となりますが、その増額した債務は限定承認の手続きによりプラスの財産を超える場合は切捨てされます。そのため、被相続人がプラスの財産よりマイナスの財産のほうを多く持っている場合は、相続人において基本的にデメリットはありません。

ただし、被相続人がマイナスの財産よりプラスの財産のほうを多く持っていれば、所得税の分だけ損をすることになります。

また、相続放棄、限定承認とも選択する場合は、相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内に被相続人の住所地の家庭裁判所に申告する必要があります。ただし、3ヶ月以内では判断をすることが難しいこともあるでしょう。その場合は、家庭裁判所に申告することによって、期間を延長することができます。

書類の作成

相続の限定承認の申述の際には、下記の書類等を用意してください。
・相続の限定承認の申述書
・被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本 1通
・被相続人の住民票除票又は戸籍附票 各1通
・申述人全員の戸籍謄本(相続人全員) 各1通
・財産目録(債務を含む)1通
・(1件につき)収入印紙(800円分)
・連絡用の郵便切手

※上記以外にも書類が必要になるときがあります。また、同一の被相続人についての相続の承認・放棄の期間伸長事件又は相続放棄申述受理事件が先行している場合,その事件で提出済みのものは不要です。

また、限定承認について事案によっては申立したほうがよいこともありますが、手続きが若干複雑なため、判断に迷った時は専門家への相談をおすすめします。

その他必要な書類については裁判所のページで確認してください。 ⇒ 限定承認 - 裁判所

申立書は裁判所のホームページよりダウンロードできます。 ⇒ 限定承認の申述書 - 裁判所

① 必要な書類を取得しよう

相続の限定承認の申述の際には、下記の書類等を用意してください。
・相続の限定承認の申述書
・被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本 1通
・被相続人の住民票除票又は戸籍附票 各1通
・申述人全員の戸籍謄本(相続人全員) 各1通
・財産目録(債務を含む)1通
・(1件につき)収入印紙(800円分)
・連絡用の郵便切手

※上記以外にも書類が必要になるときがあります。また、同一の被相続人についての相続の承認・放棄の期間伸長事件又は相続放棄申述受理事件が先行している場合,その事件で提出済みのものは不要です。

また、限定承認について事案によっては申立したほうがよいこともありますが、手続きが若干複雑なため、判断に迷った時は専門家への相談をおすすめします。

その他必要な書類については裁判所のページで確認してください。 ⇒ 限定承認 – 裁判所

申立書は裁判所のホームページよりダウンロードできます。 ⇒ 限定承認の申述書 – 裁判所

② 書類に必要事項を記入しよう

裁判所のホームページにある記入例を参考に記入して下さい。

限定承認の申立書の記入方法

事件名・印紙欄

事件名
「相続の限定承認」と記入してください。

印紙欄
提出先にて800円の収入印紙を購入して貼ってください。

申立欄

管轄裁判所
申述をする裁判所(被相続人の最後の住所地の家庭裁判所)を記入してください。
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作成年月日
作成年月日を記入してください。(空欄でも家庭裁判所の方が書類が受け付けられた日を記入してくれます。)

申立人
申述人の名前(フルネーム)を記入してください。
限定承認の申述は、相続人全員が共同して行う必要があります。そのため、申述人は相続人全てを記入する必要があります。
申述人の自筆による署名が必要です。また、戸籍通りの氏名で署名する必要があり、略字等を使用すると訂正を求められます。

押印
申述人の押印してください。印鑑は認め印で構いませんが、後で使用した印鑑は分かるようにしておいてください。

添付書類欄

添付する書類を記入してください。

申述人欄

※申立人の部分に二重線と訂正印を押印し、申述人と書きます。以下、相続人が複数いる場合には、当事者目録に全員分を※部分を申述人として記入する必要があります(記載例参照)。

本籍(国籍)
申述人の本籍を記入してください。

住所(郵便番号)
申述人の住所の郵便番号を記入してください。

住所(電話番号)
申述人の電話番号を記入してください。

住所
申述人の現在の住所を記入してください。

連絡先
申述人の連絡先(郵便番号、電話番号、住所)を記入してください。
※住所で連絡が取れない可能性がある場合のみ記入

氏名
申述人の氏名を記入してください。

氏名(フリガナ)
申述人の氏名のフリガナをカタカナで記入してください。

生年月日
申述人の生年月日を記入してください。

年齢
申述人の年齢を記入してください。

職業
申述人の現在の職業を記入してください。

被相続人欄

相続人全員の記入したら、最後に被相続人欄を設けて被相続人の情報を記入してください。

※部分
「被相続人」と記入してください。

本籍(国籍)
被相続人の本籍を記入してください。

住所(郵便番号)
被相続人の死亡時の住所の郵便番号を記入してください。

住所(電話番号)
記入なし

住所(住所の上に最後のという文字をくわえてください※記入例参照)
被相続人の死亡時の住所を記入してください。

連絡先
記入なし

氏名
被相続人の氏名を記入してください。

氏名(フリガナ)
被相続人の氏名のフリガナをカタカナで記入してください。

生年月日
被相続人の生年月日を記入してください。

年齢
被相続人の死亡時の年齢を記入してください。

職業
被相続人の死亡時の職業を記入してください。

申立ての趣旨欄

「被相続人の相続につき、限定承認します。」と記入してください。

申立ての理由欄

記載例を参考に申立ての理由を記入してください。

土地遺産目録の記入方法

遺産(土地)に関して、記載例を参考にして不動産の登記事項証明書(不動産登記簿謄本)の記載通り記入してください。不明なもの以外はすべて記入する必要があります。遺産(土地)に関して、特別受益がある場合には、特別受益目録にチェックをいれて書類を分けて記入します。

建物遺産目録の記入方法

遺産(土地)に関して、記載例を参考にして不動産の登記事項証明書(不動産登記簿謄本)の記載通り記入してください。未登記の場合には、固定資産評価証明書の記載を参考に記入してください。

不明なもの以外はすべて記入する必要があります。遺産(土地)に関して、特別受益がある場合には、特別受益目録にチェックをいれて書類を分けて記入します。

現金・預貯金・株式等遺産目録の記入方法

遺産(現金、預・貯金、株式等)に関して、記載例を参考にして記入してください。不明なもの以外はすべて記入する必要があります。遺産(現金、預・貯金、株式等)に関して、特別受益がある場合には、特別受益目録にチェックをいれて書類を分けて記入します。

申請・届け出

限定承認申立方法

事前準備

相続の限定承認の申述の際には、下記の書類等を用意してください。
・相続の限定承認の申述書
・被相続人の出生から死亡までの戸籍(除籍・改製原戸籍)謄本 1通
・被相続人の住民票除票又は戸籍附票 各1通
・申述人全員の戸籍謄本(相続人全員) 各1通
・財産目録(債務を含む)1通
・(1件につき)収入印紙(800円分)
・連絡用の郵便切手

※上記以外にも書類が必要になるときがあります。また、同一の被相続人についての相続の承認・放棄の期間伸長事件又は相続放棄申述受理事件が先行している場合,その事件で提出済みのものは不要です。

その他必要な書類については裁判所のページで確認してください。 ⇒ 限定承認 – 裁判所

申立書は裁判所のホームページよりダウンロードできます。 ⇒ 限定承認の申述書 – 裁判所

相続の限定承認の申述書の提出期限

相続開始を知ったときから3カ月以内
相続財産の状況を調査してもなお、判断できる資料が得られないときには、3カ月以内に家庭裁判所に申し立てて、申述期間を伸ばしてもらうことができます。

限定承認の申述者

相続人全員が共同して行う(相続放棄者を除く)

限定承認の申述書の提出先

被相続人の最後の住所地の家庭裁判所 管轄の裁判所がわからない場合には裁判所ホームページを参照してください。

限定承認の申述にかかる費用

・相続人1人につき収入印紙800円分
・連絡用の郵便切手(それぞれの裁判所によります)

限定承認の申述時の注意事項

財産目録にはモレなく記載します。故意に、一部の財産を記載しなかったりすると、単純承認とみなされ、限定承認することができなくなりますので注意が必要です。