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中居君と考える、残された家族のための終活

家族のための終活

中居正広が司会を務める番組『中居正広の終活スペシャル』(2015年2月21日放送)は、「終活」つまり「死」を迎えるまでにどのような準備を整えておくべきかについて学ぶという趣旨で制作された番組だが、この中で中居は興味深い発言をした。

「天国とは“二人の国”と書きますよね、だからやはり二人で皆さん行きたいのでしょうね。」

この番組では、夫婦や親子がパートナーの最期を見送る物語が紹介されているが、いずれも故人は一人で死を迎えてはいない。

付き添った人が見守り、いとおしむ中で旅立っていったのである。

 

その遺族の思いに応えるために、故人は生前何ができるか。

この問題を考えるうえで、金子哲雄氏の事例は示唆に富む。

流通コーディネーターとして有名な同氏は、療養中のころから葬儀や墓地など死後の準備を自ら進め、いよいよ最期が近いと悟ると、配偶者に葬儀の手筈を詳細に指示したという。

妻は衰弱する夫を痛ましく思いながらも支え続け、葬儀では夫の遺志に従って、滞りなく式を執り行った。

 

このように、これから旅立っていく方がその準備を行っておけば遺族はスムーズに諸手続を行うことができ、心身共に落ち着いて故人を送ることができる。

そのため、終活は亡くなる本人の身辺整理にとどまらず、遺族への思いやりという観点でも意義深い。

いざというとき、困らないためにいまからできること

では、両者は何ができるか。

まず遺族は故人が元気なうちから、自分の死後について考えるよう促すことだ。

縁起が悪い、不謹慎だと思われるかもしれないが、人の身にはいつ何が起こるかしれたものではない。

実際、金子氏も病没するまでは一年以上療養期があったものの、今際(いまわ)の際には容体が急変してしまったという。

そのため、自ら判断し、行動できるうちから動いてもらうよう働き掛けることが大切だ。

具体的には、前回紹介したような仕方でエンディングノートを渡し、財産や人間関係についてまとめてもらうとか、それが難しければ、次のような相続トラブルのよくある事例を話し、用意が無いと家族が困るということをそれとなく伝えてはどうだろうか。

 

・自宅以外に取り立てて言うほどの財産が無かった家庭では、その財産をどう分けるかでもめる。家は分割が難しいので誰か一人が受け継ぐのが現実的だが、そうすると他の相続人はなにももらえない。

・きょうだいの一人が親の介護をしており、遺産を分けるとき、その方が「きょうだいで等分するのは不公平だ。介護をした私の苦労を認めてほしい」と主張した。

・長男が大学へ進学、入学金含む学資を負担してもらったが次男は高卒。そこで、長男の相続財産は次男より少なくすべきだという意見が出た。

・互いに仲の悪い相続人がおり、財産は持ち家が一軒なのだが、一方がその家を継ごうとすると他方が「その代わり自分の取り分として現金をくれ」と言い張った。

だが、不動産価額に匹敵するほどの現金は調達できない。

 

こうしてトラブルの事例を挙げつつ生前からの備えの大切さをほのめかせば、相手も何らかの手を打ってくれるのではないか。

 

他方、亡くなる方には何ができるか。金子氏ほど周到な準備は難しくても、次のことはしておくだけで、遺族の負担は比較にならないほど軽くなる。

 

・財産の所在と大よその額を伝え、それをどう分けるかについて指示しておく。

・債務をなくす、または減らしておく。急病などでそれが難しい場合、せめて借金があることは伝えておきたい。

・喪主や葬儀の内容(規模や参列者への礼状など)を決めておく。

 

もちろん、これを口頭やメモ書きではなく正式な遺言書(その書き方はこちらを参照)として文章化しておけば、遺族はそこに記載された通りに儀式や手続を行うことになるため、煩雑な準備や葬儀社との交渉、遺族間での争い(特に、遺産分割の場で起こりやすい)を回避することができる。

故人を平らかな気持ちで見送り、見送られる側は肩の荷を軽くすることができる――このように望ましい仕方での終活は、お互いの気遣いと思いやりがあって初めて成り立つものだ。

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