遺言書相続手続相続財産

おひとりさまの財産はどこへ

今年の一月より相続税基礎控除が改正され、相続対策に高い関心が集まっている。
巷では「親族間でもめない相続対策」がよく聞かれるが、分けるべき資産があっても分けるべき親族がいないおひとりさま、いわゆる「相続人不存在」の場合はどうなるのであろうか。
そもそも相続人不存在とは、被相続人(死亡した人)に相続人となる配偶者、子(孫等を含む)、兄弟姉妹(甥、姪を含む)が誰もいない場合を指す。
これは、相続人となるべき人が先に死亡してしまっている場合だけでなく、相続人全員が相続放棄をしてしまって結果的に相続人がいなくなる場合も同じである。

法律上は、まず債権者や特別縁故者などの利害関係人により家庭裁判所に申し出がされ、弁護士や司法書士などが相続財産管理人に選任される。
その相続財産管理人が債券や債務を確認し、もう一度本当に相続人がいないかを調査する。いないことが確定されれば残余財産のうち分与が認められる部分は特別縁故者へ、認められない部分(特別縁故者不存在)は国庫へ帰属するとなっている。
特別縁故者とは被相続人と生計を同じくしていたとか、被相続人の療養看護に努めたとか、その他特別の縁故関係があった人のことである。
また、相続人が不存在の場合でも、被相続人が遺言書を残していれば遺言書に書いてある通りに財産を処分する。

ご自身が家族を持ち、お子さんがいる方にはあまり関係のない問題と感じるかもしれない。だが、友人知人には財産の引き取り手(親戚縁者)のない方はいるのではないか。また、自分の配偶者が亡くなった後に親戚付き合いをしている義理の兄弟姉妹が、お一人で亡くなった場合でも十分起こり得る問題である。

 

高齢社会に加え生涯独身の「おひとりさま」が増えている現代日本。
もちろん人の生き方は様々であるので、生涯独身であるとか兄弟姉妹がいないから不幸であるということは断じてない。
しかし、社会全体で考えた場合、今後この相続財産管理人の活躍の場が増加するのは必至であるようだ。

【タグ】,