相続財産の評価
相続税を計算するときに、この土地は5,000万円くらいですというように、税理士などがその不動産の価額を言うことがよくある。これは、今ならその値段で売れるだろうということを言っているのであって、相続税を計算するときの、その不動産の評価額とは計算が異なる。
相続税の計算では、すべての財産を現金に換算するため、その種目に応じて計算方法が細かく定められている。これを財産評価基本通達というのだが、実際、この通達はどのようになっているのだろうか。
土地を評価方法する際は、田畑や宅地、山林などその土地の種別に応じて計算方法が分かれる。宅地と借家権については路線価方式か倍率方式が採られ、農地、山林、湖沼などについては倍率方式か宅地基準方式が採用される。以下、それぞれの方式について詳細を追ってみることにしよう。
宅地の評価は、路線価のある場所については路線化方式で、それ以外の場所は倍率方式で計算される。前者は国税庁が毎年、公示地価を基準にして決めるもので、公示価格の8割前後といわれる。
基本的に宅地面積×路線価がその土地の評価額であり、たとえばある道路の路線価が10万円で、面積が50㎡であれば、50×10=500万円がその土地の評価額となる。
一方、路線価のない土地―一般に、街の中心部から外れたところにある土地―に関しては、倍率方式が採用される。これは、その土地の固定資産税評価額に対して一定の倍率をかけて計算する方式であり、その地域の宅地の倍率が1.1倍だとすれば、固定資産税評価額に1.1倍をかけたものが評価額となるのだ。
さて、故人の自宅が相続財産として残されることはよくある話だが、顔kはどのように評価さえるのか。基本的には固定資産税評価額がそのまま適用されるのだが、建設中の家屋についてはその費用原価に0.7をかけたものが評価額となる。ここで費用原価というのは、被相続人(故人)が死亡するまでに建設のために投下された費用を指す。
土地と建物からなるマンションが残された場合、計算はどのように行うか。建物部分については固定資産税評価額で、土地については敷地全体の評価額―これは、路線価方式か倍率方式で、先ほど説明したのと同じようにして計算する―建物と土地部分の評価額をたしたものが、故人のマンションに関する評価額となるのだ。
まず、人から土地を借りている場合は借地権として評価され、路線価図の借地権割合をその土地の評価額にかけて計算する。逆に、人に土地を貸している場合、更地の評価額から借地権の評価額を引いたものが最終的な評価額となる。一例をあげれば、更地の評価額が2,000万円で、借地権の評価額が1,200万円とすれば、最終的な評価額は2,000-1,200=800万円となる。
市街地農地、市街地周辺農地、市街地山林については、宅地比準方式が採られる。すなわち、その土地が宅地だとしたときの1㎡当たりの金額から、その土地を宅地に転用するときに通常必要とされる1㎡当たりの造成費に相当する金額に、その土地の面積をかけて評価額を計算する。
他方、山林や、市街地(周辺)農地以外ののうちに関しては、倍率方式で計算される。そこで、家屋の場合同様、固定資産税評価額に所定の倍率をかけたものが評価額となるのだ。
さて、市街地農地と市街地周辺農地の違いはどこにあるのか。前者は農地転用の許可を受けた農地や市外区域内で農地転用の届け出をしている農地のことを言い、後者は市街地に隣接した農地などで、農地転用許可を受ければ宅地に転用できる農地を指す。
さらに、このいずれにも当てはまらない農地も存在する。純農地と中間農地というのがそれで、まず純農地とは農業振興地域整備法で定められた区域内の農地など、宅地の影響を受けない農地のことで、中間農地とは純農地ほど規制が厳格ではなく、売買の可能性の高い農地のことを指す。
一口に株式といっても、上場と非上場の区別があることに注意しよう。まず、上場株式については、被相続人が亡くなった日の他、下の四つの評価額のうちからもっとも科学の低いものを選んで評価できる。
(1)相続開始日の終値
(2)相続開始月の終値の平均
(3)相続開始月の前月の終値の平均
(4)相続開始月の前前月の終値の平均
取引相場のない株式となると幾分厄介だ。原則として、大会社の場合は類似業種比準方式を採り、中会社なら類似業種比準方式と純資産価額方式の併用、小会社なら純資産価額方式となる。
では、具体的にどう計算すればよいのか。はじめに、類似業種比準方式では、類似の業種の株価をもとにして、その会社と類似業種の1株当たりの配当金額、利益金額、および純資産額を計算した比準割合をかけて、その70%(中会社は60%、小会社は50%)で評価するもの。
一方、純資産価額方式とはその会社が主有する資産を相続税評価額により評価した価額の合計額から、負債額及び評価差額に対する法人税等に相当する金額を差し引いた株式を、発行済み株式数で割って求めた金額により評価する方式のことだ。
預貯金は死亡したときの預け入れ残高と、死亡時に解約するとした場合に受け取る記経過利子として受け取ることのできる金額から、この金額について源泉徴収されるべき金額を引いた金額との合計で評価される。
次に、個人向け国債の評価について。これは換金価額をもとにして評価した価額で評価し、その他の利付公社債については、最終価額に既経過利息を加えて評価する。但し、これは上場されている株式の話で、非上場であれば、発行価額に既経過利子を加えて計算することになる。
ゴルフ会員権のうち、取引相場のあるものについては通常の取引価格の70%で評価し、ないものは株式に換算した金額で評価する。なお、プレー権のみの会員権は相続財産の対象外だ。
書画や骨とう品の場合、販売業者が所有するものは棚卸資産として評価するが、そうではなくて個人が所有しているとなれば、売買実例価額や精通者意見等を参考にしながら決定される。