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遺産分割あるある集――よくある遺産分割の疑問

被相続人、つまりあなたの家族が亡くなると、通常遺族はその財産を分けることになり、遺産はどのくらいあるのか、そしてそれをどう分けるのかについての話し合いを行うことになる(もっとも、遺言書があればこのプロセスは省略し、その内容通りに遺産を分けることもできる)。これを遺産分割協議という。

こう定義したところを見ると、単純な手続きであるように思える。しかし、実際には相続の山場といっても過言ではないほど厄介な代物なのがこの遺産分割協議であり、一歩間違えれば家族関係がこじれ、不和や軋轢を生むこともある。そうならないためにはどうしたらよいか、そして協議をスムーズに進行させるにはどうしたらよいのか。今回は、Q&A方式でこれらの疑問にまとめてお答えしようと思う。

Q.1遺産分割協議においてはどのようなことを話し合えばよろしいでしょうか。
A.1家庭状況や遺言書の有無によって詳細は異なりますが、一般的に次の事柄を話し合い、決定または調べなくてはいけません。
①相続人の決定…通常相続人とは故人の家族を指すため、誰が相続人となるかはある程度ご存じのこととは思います。しかし、音信不通あるいは交流が途絶えていたなどで疎遠な親族がいたり、本人は相続できると思っていても実際にはそうでない親族がいることもあります。そこで、相続人が誰なのかを調べておくことが望まれます。

調べ方としては、故人が生まれてから亡くなるまでの身分関係の変動(いつ親元から独立したか、入籍したのは何歳の時か、など)を、戸籍謄本などを取り寄せて調べる必要があります。なお、「故人は何度も引っ越しした人で、それぞれの住所の役場から戸籍を取り寄せる暇はない」とおっしゃる方がいますが、実際には故人の本籍地の市区町村役場で「相続が発生したので、手続きに必要な戸籍を取り寄せてください」といえば、必要な戸籍はすべて取り寄せてもらえます。戸籍謄本は抄本(故人のみの情報が記されたもの)と異なり、故人の縁故関係がすべてわかるように記載されており、こちらに載っている親族が相続人の候補者です。ただ、あくまで「候補者」であって、たとえ親族であっても故人との縁故関係によっては、財産を受け取れないこともあります。自分には相続権はあるのだろうか、と疑問に思われた方は、本サイトにそれをすぐ調べる場を設けてありますので、そちらでご確認ください。

②遺産の範囲と評価の確定…分割すべき財産の価値や科学が決まらなければ、そもそも遺産分割することは困難です。財産と一口にいってもその種類は様々で、不動産や預貯金、家財など多岐にわたります。このうち、現金そのものあるいは換金しやすいものであれば話は早いのですが、評価についてよく問題となるのが不動産です。正式な評価となれば税理士や不動産鑑定士に依頼すべきですが、遺産分割居扇の段階では、ひとまず不動産業者に問い合わせ、実際の取引の売買価格を訪ねておくとよいでしょう。

③各相続人の相続額の確定…各相続人の取り分は法定相続分と呼ばれる民法上の取り決めによって決定されてはいますが、その配分は減速にすぎず、相続人全員が合意すれば、その割合を変更することもできます。そのため、たとえば配偶者を指しおいて一人息子が全財産を相続することも原理的には可能です。こうした財産分配の方法なり割合なりも、遺産分割の大切な主題のひとつです。

Q.2遺言書と異なる内容で遺産分割することはできますか。
A.2相続人全員の同意があれば可能です。たとえば、子ども二人と配偶者で財産を分けることになっても、子ども一人につき財産総額の、配偶者はで……などと杓子定規に考えずとも、
自宅の土地建物は配偶者が受け継ぎ、株式は長男、預貯金は次男に渡すというわけかtもできます。ただ、ここで問題となるのは、遺言書とは異なる仕方で遺産分割するとして、はたして合意が形成されうるのかということです。特に不動産や自家用車など、換金せずにそのまま使い続けるような財産を分けるとなると論争が起こり得ます。一般に、財産を分割する方法は次の三つです。

現物分割…遺産をあるがままの形で分配。この方法で遺産分割を行うのが原則とされるが、事情が許さないことも多々ある(たとえば、持ち家を法定相続分通りに分けるのは難しい)。
代償分割…一部の相続人が、本来の相続分を越えて相続する代わりに債務を引き受け、超えた分の相続財産額に匹敵するお金などを他の相続人に渡すこと。
換価分割…財産をお金に換算・監禁して分けること。たとえば、不動産を売却して発生したお金を分けることがこれにあたる。

自宅などを分ける場合、代償分割が取られることがよくあります。確かにこの方法ならい境になることは少ないのですが、次の条件を満たしている必要があります。
・遺産が細分化困難であること。
・共同相続人の間で代償金支払いに異存がないこと。
・遺産の評価が相続人の間でおおむね一致していること。
・遺産を取得する相続人に、債務の支払い能力があること。

Q.3先日夫を亡くしました。相続人は私と、未成年の子供二人です。この場合、どのように協議を行えばよろしいでしょうか。
A.3未成年者が相続人である場合、彼(女)に不利になることが無いよう、特別代理人を立てなくてはなりません。これは親権者が家庭裁判所に申し出て、特別代理人の選任を依頼すればふさわしい人物を家庭裁判所が呼んできてくれます。もっとも、全く無関係の人物が選ばれることはまれであり、未成年の子のおじやおばなど相続権のない親族から選任されたり、相続に詳しい弁護士などの専門家が選ばれることが多いようです。これは法的に弱い立場にあり、意思決定能力も十分でないことが多い未成年者を守るための制度であり、今回のケースでは、親子だけで協議をしたり、親(質問者)だけで遺産分割を決定するようなことは認められません。また、判例によると、親権者が相続人である子を代理して協議を行うことは、その内容いかんにかかわらず利益相反行為に該当するとされています。つまり、たとえ親といえども子供の財産を勝手に処分することはできず、「自分は不公平な遺産分割をするつもりはなく、子供たちに十分優遇するつもりでいる。だから自分だけで遺産分割の内容を決定しても問題はないはずだ」という主張は通らないということです。

なお、特別代理人と混同されがちなのが布袋代理人です。未成年者は単独では法的行為(日常の買い物以外の高額な取引や契約など)を行うことができず、法律行為を行うには代理人を立てる必要があり、代理人を立てられない場合、少なくともそれに相当する人物の同意を得なくてはなりません。この役目を引き受けるのが法定代理人であり、親権者がなるのが普通です。つまり、通常の生活で未成年者の代わりを務めるのが法定代理人で、相続など特別な事態が発生した時親権者に匹敵する役目を背負うのが特別代理人ということです。

Q.4遺産分割におけるトラブルを未然に防ぐにはどうすればよいでしょうか。
A.4遺産分割でトラブルが生じる背景には、そもそも家族関係が良好でなかったり普段からコミュニケーションが十分でなかったためいざというときもなかなか話し合いにならなかったりといった、人間関係があることもしばしばです。けれども、それに劣らず多いのが、一部の相続人が特定の財産を継ぎたいといった場合や、やはり相続人の何人かが多くもらう場合などです。
まず、持ち家や事業を息子が継ぐというように、特定の財産を承継する相続人がいる場合はどうするか。大きく分けて、二つのトラブル回避法があります。
・遺言書の作成…遺産分割法の指定を遺言書でしておけば、原則としてその文面通りに遺産が分けられることになるため、たとえ一部の遺族が不満をもつことになろうとも、遺産分割自体は円滑に進むと考えられます。但し、遺言書の効力が被所に強力なのは事実ですが、決して万能ではなく、相続人全員の合意があればその内容を覆すこともできます。また、遺言書の書式は厳格に定められており、せっかく個人が作った遺言書も、内容や体裁いかんでは無効となることもあります。
・死因贈与…贈与の方法としては、被相続人が存命中に行う生前贈与が有名ですが、こちらは学の大きな財産を譲るとなると高額な贈与税がかかり、推奨されません。そこで、遺言書とは異なり財産すべての分け方を指定せず、ある特定の財産を継ぐ人物だけは決めておきたい、というときに用いられるのが死因贈与です。これは一言でいえば、被相続人が亡くなってはじめてなされる贈与のことで、たとえば他の財産の分割方法はい像に任せてもよいが、自分の事業は子供にぜひとも継がせたい、といった場合に取られる方法です。遺言書ほど厳格ではないものの、死因贈与もやはり書面で行うこととされており、個人が作成するのは困難です。これを真剣に考えるのであれば行政書士や弁護士に相談されるとよいでしょう。

Q.5父が亡くなり、遺産分割も何とか話をまとめることができました。ところが、不動産登記や相続税の申告など一連の手続きが済んだ後、父にアh罰の遺産もあることが明らかになりました。こうした場合、遺産分割協議をやり直すことはできますか。
A.5新しく見つかった財産が遺産の大部分を占める場合なら認められる公算は高いと思われます。思わぬところから思わぬ財産(または負債)が見つかることは相続の現場では少なからず起こりうることであり、特に故人がいくつかの場所に不動産をもっていた場合によく見られます。遺産分割協議をするとき、その財産が不動産であれば登記簿上の所有名義に従って遺産を確定し、そのうえではない藍をすることになりますが、この登記簿上の名義は絶対的なものではありません。仮に相続人が正規の手続きを踏んでその不動産を受け継いだとしても、故人が生前に第三者にその不動産を売却していたとすれば、相続人はその不動産を放棄せざるを得なくなります。そこで遺産分割協議自体が浮こうとなり、やり直すことになることがあります。

但し、新たな財産が見つかったり、所有権に移転があったりするたびに遺産分割が無効になってはいつまでたっても遺産分割は完了しません。そこで、裁判所では、こうした遺産の移転や発見があったとしても、それが遺産の大半を占めるような場合を除けば遺産分割協議の決定事項は無効とならないとしています。

Q.6母が亡くなりましたが、母は生前事業に失敗し、多額の借金を残しておりました。このような場合、相続人にも夫妻が及ぶのでしょうか。また、これに対処する手立てはあるのでしょうか。
A.6相続人は、プラスの財産だけでなくマイナスの財産(負債。消極財産とも呼ばれる)をも引き受けるのが原則です。しかし、この負債は本来被相続人足る個人が自らの責任において作ったものであり、これを相続人だからという理由だけで遺族が肩代わりするというのは、道義上好ましいこととは考えられません。そこで、民法は相続放棄という選択肢を用意しています(実際には限定承認という道もあるのですが、より多く用いられるのは相続放棄です)。

これは文字通り相続人としての資格を放棄することで、これは被相続人の権利義務一切を拒否する意思表示となります。もし相続放棄をしたら、その方は被相続人の負債は一切背負わない代わり、相続財産をもらうこともできなくなります。したがって、プラスの財産のみもらって負債は引き受けたくないという要求は認められません。相続放棄するかしないかは各相続人が個別に決定でき、そのために考える期間を熟慮期間(相続の発生を知ってから三カ月以内)といいます。この「相続の発生を知ってから三カ月」とは、一般には被相続人が亡くなってからの期間を言いますが、たとえば
相続放棄を行う相続人がやむを得ない事情で故人が亡くなったことを知るのが遅れたときや、自分に相続できる財産があるのを知るのが遅かったときなどは、被相続人が亡くなって三カ月以上たっていても認められることがあります。思い当たる事情があるときは、家庭裁判所に相談するとよいでしょう。

手続きにあたっては、本人が相続放棄申述書を作成し、被相続人との続柄のわかる戸籍謄本など、相続する権利があることを示す書類を添付して住所地が管轄である家庭裁判所に提出します。必要書類は家族の縁故関係等によって異なるため、事前に家裁に問い合わせることをお勧めします。

Q.7父は生前地主から土地を貸借しておりましたが、亡くなった時、その地主から土地を明け渡してほしいとの催告がきました。こうした場合、その土地は明け渡さなくてはならないでしょうか。
A.7借地権や借家権は被相続人だけの契約ではなく、その相続人(遺族)にも効力が及びます。そのため、たとえ故人が結んだ貸借契約であっても、死亡と同時に契約関係が終了するわけではなく、相続の対象となります。今回のケースでも、地主が相続人に対して土地の明け渡しを請求することはできません。遺産分割が成立するまでは相続人には共同で借地を利用する権利が保証され、分割協議終了後もその土地を取得した人が全部うを利用することができます。

もちろん、借地が所有地となるわけではないので、賃料は払い続けなくてはなりません。被相続人が子の支払いを怠っていた場合には、その延滞料は相続人の共同負担となります(この延滞料は、たとえ一人の相続人が借地すべてを相続することになっても共同負担となります)。また、遺産分割が完了するまでの賃料も、相続人が各々の負担分を決め、払い続ける必要があります。そして、だれがその借地を受け継ぐかを確定した後は、当然支払い義務はその人のみに移ります。

なお、遺産分割が成立して借地権の相続取得者が決まった時点で地主が名義変更料や更新料という名目で第期の請求してくることがありますが、そのような求めに応じる必要はありません。名義変更料にはそもそも法的根拠がなく、更新料に関しても、相続によって賃借契約が期間満了となるわけではないので、発生する理由が無いのです。

Q.8先日父が亡くなったのですが、遺品整理をしていたら遺言書が出てきました。この後どうすればよいですか。
Q.8遺言書が公証人役場で作られたものかどうか、役場で確認することから始めます。もしそうであればその遺言書は「公正証書遺言」と呼ばれ、公証人が故人とともに作成した、正式な遺言書ということになります。この場合、遺言書の正当性はほぼ間違いなく認められ、その内容通りに遺産分割が実行されることになります。
それ以外のケースでは、直ちに家庭裁判所に届け出てください。また、遺言書に封がしてある場合、開封してはなりません。そのことだけで遺言書が無効となることはないものの、改変などを疑われてしまううえに過料を取られてしまいます。家庭裁判所では、遺言書の形式その他の状態を調査確認し、遺言書を確実に保存します。これを検認といいまず。誤解されることが多いのですが、検認はあくまで遺言書が紛失したり改変差荒れたりすることが無いようにするための処置であり、その内容が適切かどうかまではチェックしてくれません。したがって、検認の手続きを経た遺言書でもその効力について裁判所で争うことは可能ですし、遺言書検認を経ていないからといってその遺言書が無効になることはありません。

Q.9遺産をどう分けるかの話し合いが済んだとして、次は何をすれば甥でしょうか。
A.9何をどう分けるのかについての書面を作成し、場合によっては銀行や税務署など各機関に提出する必要があります。この書面のことを遺産分割協議書といいます。まず、遺産の中に不動産があって遺産分割により所有権を移転する場合、所有権移転登記(相続登記)申請の際の必要書類として遺産分割協議書があります。また、相続税を申告する際、法定相続分と異なる遺産分割をした時もやはり税務署への提出は必須です。さらに、遺産の中に銀行預金があって、遺産分割によりこれを特定の相続人が相続する際やはり協議書を求められることがあります。協議書には、誰がどの財産を、どれだけ相続するかの情報はもちろん、各相続人の署名捺印も不可欠です。いかにテンプレートを示しておくので参考にしてください。
遺産分割協議書
平成○年○月○日に死亡した被相続人□□の遺産について、同人の相続人全員に置いて遺産分割協議を行った結果、各相続人がそれぞれ下記の通りの遺産を分割し、取得することと決定した。


1.相続人○○が取得する財産
【土地】 所   在  東京都□□区○○丁目△番
宅地200.00㎡
【建物】 所   在  同所同番地 家屋番号□番
木造瓦葺2階建居宅一棟 1階 50.00㎡、 2階  50.00㎡
【家財】
同居宅内にある家財一式
2.相続人□□が取得する財産
【現金】   金○○円
【預貯金】          ○○銀行○支店 普通預金 口座番号00000000          ○○銀行○支店 定期預金 口座番号00000000
【株式】            ○○株式会社 普通株式  100株
3.相続人○○が負担する債務
平成×年度未納分固定資産税××円

3.○○は、第1項記載の遺産を取得する代償として、□□に平成△年△月△日 までに、金○○円を支払う。
4.本協議書に記載のない遺産及び後日判明した遺産については、相続人□□がこれを取得する。
以上のとおり、相続人全員による遺産分割協議が成立したので、本協議書を何通作成し、署名押印のうえ、各自1通ずつ所持する。

平成○年○月○日

神奈川県○○市○○区○丁目○番地○号    相続人○○  ㊞
山梨県□□市□□町□丁目□番地□号     相続人□□  ㊞

ただ、前述したように遺言の書式には厳格な定めがあり、自分だけで作成する場合ワープロでの記述は一切認められず、日付と押印のないものは無効となります。また、遺産の分け方についてもどの財産をだれに、どの割合で分けるのかといったように細かく指定する必要があり、「自分の5,000万円の財産は子供二人で半分ずつ相続するものとする」などといったあいまいな書き方では認められないことが多々あります。もし被相続人となる人物から、遺言書について相談を受けた場合、こうした書式上の注意点にはくれぐれも気配りを怠らないようにしてください。

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