倒産を防げ!中小企業の事業承継
政府は3月27日、親族以外の従業員が中小企業の経営権を引き継ぎやすくなるよう「憧憬円滑化法」の改正案を閣議決定した。中小企業経営者の高齢化が進む一方少子化により親族内の後継ぎが減少したことを受け、親族以外の人物でも受け継ぎやすくしようというのが狙いだ。
実際、帝国データバンクの調べによれば、中小企業経営者の高齢化は右肩上がりの傾向を見せており、昨年末で平均年齢59.0歳と、過去最高となった。経営者が高齢化すると、時代の変化に対して柔軟な姿勢が取りがたくなったり彼らの持つ技術が伝承されうに失われる恐れがあるなどのデメリットがあり、事業存続のためにも、円滑な事業承継に向けた取り組みは喫緊の課題といえる。
今回の改正で、ポイントとなるのは自社株の受け渡しについて。
たとえ自分の企業の株であっても財産である以上自社株は立派な相続財産となるのだが、之を親族―より厳密には、法定相続人―以外の従業員が受け継ぐ場合、「遺留分」という民法上の規定が足かせとなってきた。
これは、法定相続人(民法により相続する資格があると認められた一定以上の親等の親族。誰が法定相続人に該当するかは、家族構成や状況により異なる)に、最低限の財産(通常、法定相続分の半分)をもらう権利を認めたもので、たとえ第三者に自社株を譲渡したくても遺族が遺留分を主張すれば一定程度の割合は彼らに配分しなくてはならず、結果事業を受け継ぐはずの人物が、承継にあたって必要な株を確保できないことがあった。
しかも、遺族が遺留分を放棄するには自分から家庭裁判所に申し出なくてはならず、このハードルは低くなかった。
改正案では、事前に遺族から合意が得られれば遺留分を放棄してもらうことができるようになり、家庭裁判所での申立は不要となる。
この改正により、社外から人材を引き抜いての事業承継が容易になるとともに、M&Aを含めた多様な事業承継の仕方が広まることが期待されている。
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