相続手続相続財産

おひとりさまの財産の行方

少子高齢化と核家族化が進む中、孤独な老後を迎える国民、すなわちシニアのおひとりさまと呼ばれうる方の人口が今後増えてゆくと思われる。というのも、核家族化によって、子育てを終えた夫婦が子どもや孫世代と別居する一方、少子高齢化が進行すれば必然的に高齢者の数が増える中、彼らを支える若者世代が少なくなるためである。この現象が進むとさまざまな弊害が考えられるが、そのうちで、相続に関連するのはやはり、身寄りのない高齢者が亡くなった時、その財産をどう処分するか、換言すれば、財産の行方はどうなるのかという問題だ。

ユーザーの皆様の中には、こう考えておられる方もあるかもしれない。すなわち、「自分の親には子供(ユーザー自身やごきょうだい)がいるし、他にも親戚縁者はたくさんいる。だからおひとり様の財産がどうなるかなどという問題は無縁だ」と。だが、胸に手を当てて考えていただきたい。友人や知り合いのご家族には、縁者が少なく、将来おひとりさまとなる可能性の高い方はないだろうか。また、ご自身の尊父や尊母はともかく、肝心のあなた自身が亡くなったら、はたして遺産を受け取る方はいるだろうか。もし少しでも思い当たる節があるなら、今回提起された問題はあながち無関係とも言い切れないだろう。おひとり様の遺産相続は、今日のわが国では決して単なるエピソードにとどまるものではない。むしろ、我々の相続を考えるうえで、勘定に入れなくてはならない問題なのだ。

さて、相続人(通常、故人の親戚)が全員死亡していたり、仮に生存者がいたとしてもその方が相続放棄を行うか、相続欠格者(故人に著しい損害を与えたり、不法行為を行うなどして相続する権利を失った人)となった場合、被相続人(故人)の遺産はどうなるか。もちろん、最初に行うべきは、相続人の調査である。故人の戸籍謄本(本人と血縁関係にある者、姻戚関係にある者と本人の関係や、各自の生年月日などがすべて記された書類。これに対し、その人の住所や生年月日のみ記された書類は戸籍抄本という。いずれも故人の本籍地、あるいは住所地の市区町村役場で入手可)を取り寄せ、親兄弟はもちろん、叔父や叔母、いとこなど、縁故のある人物が一人でも生存していないかを調べ上げるのだ。もし一人でも該当者があれば、相続人不在とはならず、その人が相続人となる。

これに対し、本当に一人も相続人がいないか、いても相続放棄か相続欠格者である場合、相続財産は一種の法人となり、債権者などの利害関係者、または検察の請求によって、家庭裁判所が財産の管理人を指定することになっている。ここで選任された管理人の仕事は次の通り(後篇に続く)。

身寄り無くして死を迎えた方の財産はどうなるのか。たとえ一人でも相続人がいればその人が受け継ぎ、管理することになるが、もし一人も該当者がいなければ、相続財産は家庭裁判所の選任する管理人に任される。

まず相続財産管理人が選任されたことが官報に公告され、相続人の名乗り出を待つ中、管理人の側でも相続人を探す。公告後、相続人が現れなければ清算手続きを開始し、債権者や遺言による受遺者(財産を受け取る人)がいないか調べるため、該当者がいたら名乗り出るよう官報に公告を出す。それでも見つからない場合、特別縁故者(故人の生前特別に協力したり、生活を支えるなどして貢献のあった方など)を募り、もしいればその人の財産分与の審判(受け取る資格があるかのチェック)が行われる。その審判に通らないか、あるいはそもそも特別縁故者さえもいなければ、財産は国庫に帰属、つまり国家のものとなる。このように、相続人のいないご家庭の財産は、最終的には国家の所有となるような仕組みとなっているのだ。

なお、特別縁故者と認められる人物は、たとえば養子や内縁の妻、故人の療養看護に努めたヘルパーや看護師、精神的、経済的に故人の手となり足となった友人知人など。もし心当たりのある方がいれば、二回目の公告期間満了後三カ月以内、つまり個人が亡くなってから実質七カ月以内に、財産分与の請求を家裁に出す必要がある。

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