特別受益?――不公平をなくすための税制度
一人だけ多く受け取ると、トラブルのもとに
次のような話を聞かれたことはないだろうか。
青年実業家R男は大学卒業後、株式会社「共和国金融」を設立するため、資産家の父親から2,000万円の資金援助を受けた。その後、父親が亡くなり、母とJ樹とで遺産分割することとなった。A男は法定相続分通り全財産(一億円)の25%を受け取るつもりだったのだが、J樹の横やりが入った。
「兄者は親父から既に多額の遺産を受け取っておるではないか。それなのに今度受け取る額が俺と同じとはどういうことだ。納得のいく説明をしてもらおう。……なぜ何も言わん。ぬお~、ふぬけたか兄者は!」
この場合、R男が設立資金として受け取った金額を考慮して、母とJ樹が受け取る遺産額を増やすことはできないのだろうか。
特別受益の考え方
それを可能にしてくれるのが、特別受益と呼ばれる制度だ。
これは結婚資金や開業資金などで多額の贈与を受けた人間に適用されるもので、適用された場合、遺産額に特別受益分を含めたうえで遺産を分割、その後受益者の相続額から贈与分を引くことになる。
たとえば、上の例ではまず1億+2,000万=1億2,000万円を3人で分けたとする。このときR男は3,000万円受け取る計算になるが、ここから2,000万円を引いた1,000万円が彼の相続額となる。そして残りの1億-1,000万=9,000万円を、母とJ樹で分けるのだ。
こうして不公平はある程度解消されるのだが、特別受益は必ず認められるわけではなく、被相続人の財産額や生活状況など、諸事情が考慮される。
また生活費の援助などで、親がある程度子供に資金援助することは取り立てて珍しいことではないため、次のような仕方で多額の資金援助を受けたのでもない限り、特別受益があったと認められることはまれだ。
・婚姻の際持参金を貰った
・独立して事業を始めるとき、開業資金を出してもらった
・住宅取得資金を出してもらった
・私立の医科大学への多額の入学金を出してもらった
心当たりのある方は、遺族間で不公平が生じるのを防ぐ手段として、遺産部分割協議の際に切り出してみるとよいだろう。
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