書けばいいというものではない――失格な遺言書とは
遺言書は強い
遺言書は相続トラブルを避ける上で、最も有効な手段の一つだ。
遺言書の効力は大変強力であり、家庭裁判所から有効な遺言書と認められるか、公証人役場で作成されたのであれば、その内容は原則最優先され※、故人の要望通りに財産が分けられる。
また、遺言書はしばしば財産の分け方しか指示できないと誤解されているが、実際にはその効力は多岐に渡り
子の認知(隠し子がいた時など、その子を実子と認め、法定相続人の一人に入れること)
相続人の排除(特定の相続人の相続権をなくすこと)
遺産分割の禁止(死後最長5年まで、遺産分割を延長させる)
財産管理の仕方の指定
…等々と言ったことが、すべてこの一通の手紙で指示することができる。
遺言書とは自分の死後一族のすう勢を左右できる、まさしく故人の最後のメッセージなのだ。
こんな遺言書は認められない
とはいえ、遺言書は本人が書きさえすれば、必ず正式なものと認められ、その内容が忠実に執行されるわけではない。
不備があるなどして家庭裁判所から有効な遺言書とみなされなければ、その内容は無効となる。
特に、この手のミスは自筆遺言書に多い。遺言書を書く用紙や筆記用具は特に決まっておらず、チラシの裏に鉛筆で書くなどしてもかまわない。
だが、文面は必ず自筆で書かなくてはならず、ワープロや代筆は一切認められない。
また、作成した年月日が正確に書かれていること(スタンプなどは不可)、本人の署名・押印があること、あくまで一人が書くこと(夫婦二人で一通を作成、というのはNG)も必要条件となる。
こうした間違いは、公正証書遺言ならば起こり得ない。これは公証役場で公証人に内容を伝えて代筆してもらうという執筆方法で、行政書士に頼むか、公証役場に行けば
作成してもらえる。財産額によって手数料は異なるが、5,000万円までなら2,9000円となっている(詳しい料金表はこちら)。
この場合、専門家のチェックが入るので、自筆遺言書のようなミスはない。また、変造・偽造の虞が無いのも大きい。
但し、たとえ書式は整っていても、内容的に不適切であるとして無効となることもある。
たとえば、財産をペット(人間以外)に相続させるとか、公序良俗に反する(○○を殺してくれたら財産をやる、など)と言った場合がそれだ。
遺言書は故人が自分の意思(遺志)を伝える最後の手段であり、その内容が自分だけでなく遺族の状況や思いを反映させ、お互いにとって最も満足のいくようであれば、残された人々にとって、望外のプレゼントとなることは言うまでもない。
一筆を認めようと決意した故人の覚悟を無にしないためにも、遺言書の執筆を勧められる際は、書式・内容の両面に不備が無いように気を配りたい。
※もっとも、遺言書は万能ではない。まっとうな遺言書であっても、内容に遺族が不満がある場合、遺産分割協議の際相続人全員の同意が得られればそれを覆し、自分たちで決めた通りに財産を配分することなどが可能だ。
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