遺産分割の基本的なルール
遺産分割の基本
遺言書がある場合は、遺言書による遺産分割つまり遺言書の内容の通りに相続することが優先されます。
そこで、よくこんな質問をいただくことがあります。
「相続人全員が同意した場合、遺言書の内容を変更できますか?」
大切な方が遺言書を残して亡くなってしまいました。
残された遺族が悲しみに暮れる中で、その方の遺言書を何て書いてあるのかなと思って開けてみます。その遺言書の中を見て、この遺言書に書いてある内容を変更できないのか、そのように考えるケースがあるかもしれません。
まず、ここで問題になるのが、遺言書が自筆証書(自分で書いた遺言)であった場合、勝手に開けてみるということ自体が法律違反となってしまいます。自筆証書遺言は相続を知ってからすぐに家庭裁判所に提出して検認を請求しなければいけません。相続人の立会いの元に家庭裁判所で開封する必要があるということです。
遺言書の種類については以下の記事も参考にしてください。
それでは話を元に戻して、誤解をなくすために遺言書が公正証書遺言であった場合を前提に、遺言書の内容を変更できるか、という点ですが、答えは×です。
では、遺言書の通りに相続するしかないのでしょうか?
いえ、遺言書通りに相続しなければいけないということはではありません。
遺言書の内容を変更することはできません。遺言書の偽造は違法行為です。
ただし、相続人全員が同意した場合に限り、遺言書とは異なる相続をすることは可能です。
実際に、亡くなった方のご遺志とはいえ、感情の問題もよくありますが、感情以外の部分でも、遺言書の通りに財産をわけてしまうと、相続税が高くなってしまうケースも少なくありません。
遺言書があったとしても、相続人全員が同意をすれば遺産分割協議、つまり話し合いによって分割の内容を変更することが可能となります。ここで注意が必要なのは、1人でも相続人が同意しなければ、遺言書の内容が優先されるということです。
次に、遺言書がない場合ですが、遺産分割協議書による遺産分割が必要です。相続人全員での話し合いで財産の分け方を決めるということです。
「法定相続分通りに分ける必要はありますか?」
相続人全員が同意すれば、どのような割合で分けても問題ありません。
非常に誤解されている方が多いですが、「法定相続分」というのは、あくまで分け方の目安として定められているものなので、この通りにわけなければいけないことはありません。あくまで相続人全員が同意すれば、どのような割合で分けても問題ありません。
では、相続人全員の同意が得られなかった場合どうなるのか?
相続人全員の同意が得られない場合は、調停による合意、家庭裁判所において、調停委員立ち合いのもと、話し合いによる合意が行われていきます。調停でも合意ができない場合は、審判による決定、家庭裁判所において、裁判官による決定が行われます。
上記のように、遺言書がある場合と、遺言書がない場合とで遺産分割のルールが大きく異なります。
遺産分割で揉めやすいケース
相続において、もめやすいケースは3つあります。
まず、1つ目は二次相続です。
両親と子ども二人という家族がいた場合、両親のどちらか一方が亡くなってしまう、このことを一次相続という呼び方をします。両親のうち残された方が亡くなってしまう、これを一般的に二次相続という呼び方をします。
なぜ、二次相続でもめるのか?
一次相続の場合には、子ども同士の仲が悪かったとしても、中立の立場の親御さんがいるので、「親御さんがそういうならいい」と話し合いがまとまりやすいのですが、この中立の立場にいた親御が亡くなってしまった場合に、仲裁に入る人がいなくなり揉め事に発展するというケースが少なくありません。
次に、揉めやすいケースの2つ目が、認知症が絡むケースです。例えば、両親の一人が亡くなったあとに残された親御さんが認知症になってしまった。そして、その親御さんの介護をするために長女のご家族が一緒に住んで親御さんの世話をしていました。この長女のご家族が、親御さんが病院に通うための費用や生活費を工面するために、親御さんの預金口座からお金を引き出しているケース、こういった事例はよくあります。
このような生活を長いこと続けたうえで親御さんが亡くなってしまった。そしていざ遺産を分けましょうという話になったときに、長女さん以外のご遺族が、親御さんの預金通帳を見て「何でこんな財産少なくなってるんだ」と言われて揉め事に発展してしまうケースは非常によくあります。もし、認知症などにより、ご両親のお金を子どもが預かるときには、帳簿をつけるなどして、何にお金を使ったかがわかるようにしておくことでトラブルを回避できる可能性が非常に高くなります。
最後に、揉めやすいケースの3つ目は、お金で分けられないケースです。簡単に言えば、相続財産の多くが不動産などの資産の場合です。例えば、財産が5000万あったときに、不動産が4000万、現預金が1000万しかないという場合、不動産は長男、現預金は次男という分け方にしてしまったときに、財産のバランスがだいぶアンバランスになってしまいます。さらに、不動産に長男が住んでいると言った場合、不動産を売却して現金化するということも容易ではありません。こういった形になってしまうと揉め事に発展してしまうケースは多くなってしまいます。よく多くの方がうちは揉めるほど財産ないから心配することないよと言う方非常に多いんですけれど、実は統計を取ると財産が大体5000万円くらいあるご家庭が一番揉めやすいという統計の結果が出ています。
上記の3つのケースに当てはまるようであれば、事前に相続の対策をしておくことをオススメします。