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今からできる、事業承継の準備

我が国の高齢化が叫ばれるようになって久しいが、内閣府の調べでは2013年現在で高齢者人口(65歳以上)は、約3,190万人と過去最高を記録し、人口の4分の1以上を高齢者が占めている。
経営者が高齢化すると、新しいビジネスモデルを変化し、時代の変化についていくことが難しくなったり、後継者を選出・教育する時間が無くなったりといったデメリットがあり、もちろんいたずらに焦る必要はないものの、企業オーナーは自分が議決権を握っているうちに、後継者を考えておく必要はあるだろう。
今回は、事業承継に備え、社長は今から何ができるのかを考えてみよう。
まず、社内の財産状況を把握しておく必要がある。
通常企業は損益貸借表やバランスシートなどを作成しているものだが、それを経理に任せきりで自分はほとんど目も通さず、できあがったものに判子を押すだけ、というのでは、者の存続はおぼつかない。
会社の資産や権利、会社の保有している不動産などの権利はもちろん、負債はいくらあるのか、流動比率はどの程度あるのかといった細部まで確認し、資産状況をいつでも説明できるように、会社のお金の流れには絶えず目を光らせておく必要がある。
特に、負債の多寡は継承者にとっても肝心であり、あまり借金がかさんでおり返済のめどが立たないというのであれば、後継ぎは辞退するという選択もありうるだろう。
そこで、現経営者は積極財産だけでなく消極財産についても理解し、後継者に清濁泡あせて説明する準備をしておきたい。
さらに、事業承継の際は相続税がかかることも少なくない。
後継ぎには自社保有株を譲ることになるが、その際は相手が株を購入する資力を持っているのかだけでなく、相続税を払うことができるのかという点にも注意する必要がある。

企業の税金対策としてはM&Aも考慮に入れたい。
この方式はわが国ではまだ定着していないが、社外から次期代表を引き抜くことで、前経営者は会社を売却することになるため収益を得ることができ、社内選出よりもさらに選択肢は拡大するため、真に適格と思われえる人材を、複数の候補から選ぶことができる。
但し、前経営者の社員にとっては労働条件が変わることになることが多く、そもそも彼らの雇用が維持されるかどうかは売り手と買い手の交渉次第になってしまう。
また、自社株をはじめとする社の財産が期待通りの額で売れるとは限らず、売却に当たって費やした投資額が売却額を上回れば、当然売り手は損することになる点にも気をつけたい。

M&Aではなく、親族あるいは社内から後継者を選任する場合、受け継ぐ会社は相続財産の一つとなる。
相続税を申告・納付する場合、資金調達に必要な期間は相続開始から10ヶ月以内、相続放棄が可能な時期間は3ヶ月と決まっている。
相続税を減らすには、要支援くみするなどして相続人の数を増やすという方法が効果的だ(基礎控除額が増えるため)。
相続時に負担する税金は、自社株式の評価額が高くなれば高くなるほど高くなるため、特に経営が軌道に乗って順調だとしたら、節税対策は真剣に検討する必要がある。
親族継承の場合小規模の事業所であれば評価額を下げるなどして相続税を抑えることもできる。
相続税に強い税理士に相談するなどして、こうした節税スキームも視野に入れておこう。

最後に、不謹慎な話で恐縮だが、自分が死亡したときの死亡退職金、最終給与、社内貯金、企業年金、葬式代金などについても十分に念頭に入れておこう。
特に死亡退職金や生命保険金、葬儀代の一部は控除されることをご存知だろうか。こうした制度を活用しつつ、少しでも後継者の負担を減らし、引き続き順調な経営ができる下地を整えておくことが、現役社長には求められる。

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