相続財産

特許権は相続の対象となりますか

発明に関心がある人によく知られている、家庭の主婦の方が発明した、「洗濯機の糸くず取り具」。特許料はトータルで3億円を超えるそうです。このようにビジネスで大成功した特許だけでなく、発明者のかたのある意味、人生をかけて獲得した特許権も、相続の対象となります。

特許権は、財産権ですので、不動産などの一般財産と同じように相続人が相続することができます。特許権を相続するには、遺産分割協議書などに基づいて、特許権の名義変更の手続を行います。特許法第九十八条によれば、相続の場合は、遅滞なく、その旨を特許庁長官に届け出なければ、その効力を生じません。

被相続人の特許権者が家族とあまり相談なく特許権の取得やビジネスを行っていた場合、相続人は特許権について事情が理解しなくい状況も起こりうると思います。特許法第11条によれば、特許権者本人が亡くなったからといって、特許の代理人(弁理士等)の代理権は消滅しません。ですので、その弁理士に連絡を取って特許権の移転登録手続を行ってもらうのがよいと思います。

代理人費用や特許庁に納付する費用もかかります。また、特許権を維持するための特許料が毎年かかります。被相続人のかたが自分の発明の記念のために、特許権を維持していることもあり得ます。そのため、特許権を維持する費用も検討し相続するか否かについては慎重に判断する必要があります。

特許権に限らず、実用新案権、意匠権、及び商標権も相続の対象となりますが、特許権と同様の手続きをとって相続する必要があります。著作権も相続できますが、著作物については、それらを創作した時点で、著作権が自動的に発生しています。そのため、著作物の著作権を取得するための手続きは、基本的には必要ありません。しかし、後になってトラブルが起こることも考えられますので、遺産分割協議書を作成しておくことをお勧めいたします。

相続による移転登録申    権利者である自然人(個人)(被相続人)の死亡により、その権利を相続人が承継するための手続です。特許庁に相続による移転登記申請書を提出する必要があります。お問い合わせ先は、特許庁審査業務部審査業務課登録室です。詳しくは、特許庁のサイトで確認できます。https://www.jpo.go.jp/system/process/toroku/iten/tetsuzuki_08.html

                                   (20210529)