遺言書

もめない遺言書の書き方

三つの遺言書

遺産分割協議でもめるのを防ぐには、適切な書式に従って作成された遺言書を準備してもらうのが上策だ。
ただ、そもそも遺言書はどうやって書けばよいのか、そしてどうしたら書いてもらえるのか、疑問に思われる方がいるだろう。
そこで、「遺言書の書き方」と「遺言執筆の頼み方」の二回に分けてご説明しよう。

遺言書には、全て被相続人(以下、本人)のみで作成する「自筆証書」と、公証人役場にて証人に代筆してもらう「公正証書」、そして本人が署名・捺印した遺言状を公証人役場に認めてもらう「秘密証書」の三パターンがある。それぞれの作成法とメリット・デメリットをまとめておこう。

自筆証書
作成法…本人が全文・日付(作成年月日を正確に記入)・署名を自筆で(ワープロ不可)書き、捺印する。
メリット…費用がかからず、いつでもどこでも作成可能。
デメリット…遺言書の要件を満たしていない(必要事項の記入漏れや訂正法の不備など)ことで全体が無効になるトラブルが頻発。開封の際、家裁で検認という遺言書のチェック作業が必要とされるなど、手間もかかる(検認には、相続人すべての戸籍謄本等を取り寄せる必要がある)。

自筆証書遺言については、法務省の法務局での保管制度が2020年7月10日から開始されています。記載様式についても若干緩和さている面もあります。法務省のサイトなどで確認をお勧めいたします。20200723追記

公正証書
作成法…公証人役場で本人が口述したものを証人が筆記し(ワープロ可)、双方が承認する。役場には原本が、本人には正本と謄本が残される。
メリット…不備の無い遺言書を作ることができ、しかも検認なしで開封・執行可能。
デメリット…財産額にもよるが、安くはない費用がかかる(たとえば、相続額が3,000万~5,000万円の場合手数料29,000円、5,000万~1億円の場合43,000円かかる。詳しくは日本公証人連合会のホームページにて確認されたい。)。

秘密証書
作成法…本人が署名・捺印した遺言状を役場へ持ってゆき、その表紙にサインしてもらうことで遺言状の存在を証明してもらう。
メリット…ワープロ原稿でもよく、公正証書と異なり、内容の秘密が守られる。
デメリット…自筆証書同様、家裁での検認が必要。

オススメの遺言書パターン

戸籍謄本等の準備には時間がかかり、相続手続きには他にも煩瑣な作業が続々控えていることからして、なるべく公正証書にすることをお勧めする。
以下は、遺言書の記述のうち、効力を持つ事項に関すること。これ以外の記述は参考程度と受け取られるだけで、文面通りに実行されることは期待しない方がよい。

ⅰ子の認知(認知していなかった子を新たに認める場合)
ⅱ遺言執行者の指定
ⅲ遺贈(法手相続人以外の個人、法人等に財産を譲りたい場合)
ⅳ未成年後見人・未成年後見監督人の指定
ⅴ相続人の廃除(どうしても譲りたくない相続人がいるとき)
ⅵ相続分の指定
ⅶ遺産分割方法の指定(財産を現物のまま分けるか、お金に換えるか、など)
ⅷ遺産分割の禁止(最長5年)
ⅸ相続人相互の担保責任の指定(例:遺産を土地で相続したYさんが、地価が下落したことで損をしたら、お金で相続したMさんに埋め合わせをしてもらえる。その埋め合わせをどこまでするかを決めたもの)
ⅹ遺贈に関する遺留分減殺方法の指定
ⅺ祭祀主催者の指定
ⅻ特別受益の持ち戻しの免除(特別受益を受けた相続人が、その分を減額されない)

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