相続手続相続財産

こんなときどうする?よくある相続の悩み

今年一月より相続税法が改定され、これまでよりも相続税の対象者が増える見込みとなった。
また、相続税とは関係のない方、つまり基礎控除額内に財産が収まってしまうようなご家庭の方の間でも相続への関心は高まっている。
実際、相続税がかかるかかからないかにかかわらず、人が亡くなった後の手続きというのは煩雑であり相続人は多忙を極めることになる。
死亡届の提出に始まり世帯主の変更届、火葬許可申請書の提出、各種名義変更、各関係者への死亡の事実の報告、遺産分割協議書の作成……財産の多寡にかかわらずこれらは必須の手続きであり、相続人はこうした処理に忙殺されることになる。

その中で相続人は、自分たちの遺産をどう分けるか、そして、そもそも遺産はどこにどれだけあるのかといったことをも考えなくてはならない。

大切な人を亡くした後は、それまでの看病疲れや悲しみがどっと押し寄せ、相続のことには十分集中して考える暇がないと思われる。
そのため、不謹慎と思われ得るかもしれないが、故人が存命の内から相続のことは考えておく必要があるだろう。
だが、いざそれについて考え始めると、たちまちいろいろな疑問が生じてくる。
今回は、そのうちでもとくに相談の多いものをいくつか挙げ、妥当と思われる解決策や回答を示しておきたい。

まず多いのは、相続税とはどのように課税され、自分はその対象となるのかということだ。
昨年までは相続税の基礎控除額が「5000万円+1000万円×法定相続人の数」で計算され、この控除額よりも財産総額が低ければ、相続税の納付はもちろん、申告すら必要なかった。
しかし今後は「3000万円+600万円×法定相続人の数」となる。
つまり、基礎控除額が従来の6割になったのだ。
たとえば、4人家族のご主人が亡くなり、配偶者と子供三人で継ぐとしよう。26年までは基礎控除額が8000万円となる。
この場合、26年までの制度下では相続財産が8000万円以下であれば、税務署とは無縁でいられた。
一方、今年からは基礎控除額が4800万円となる。つまり、4800万円を超える相続財産があれば、相続税がかかる可能性があるということだ。
「こんなときどうする?よくある相続の悩み②」
相続税の控除が引き下げになったのはたしかに大きいが、多くのご家庭にとってはそれでも無縁な話だ。
というのも、相続税は単に4,800万円を超える財産を持っていれば必ず課税されるわけではなく、そこには種々の例外規定、すなわち特例が働くためだ。
以下、そのうちでも代表的なもの、つまり使用頻度の高いものをご紹介しよう。
もしも「自分はもしかしたら相続税の対象かも」と心配される方がいれば、税理士等専門家に相談してこれらの特例を使うことを考えてもよいだろう。
なお、本サイトでは税理士への相談は無料でできるため、是非ご活用いただきたい。

特例①小規模宅地等の評価…生前から土地を住居や事業所として使っていて、しかも家族(配偶者または被相続人の生前同居していた子など)がその住居や事業所を使用し続ける場合に限って使える特例。 相続する土地が被相続人の住居であった場合、そこは特定居住用宅地とされ、330㎡すなわち100坪までは税額が80%少なくなる。 また、同じ土地を被相続人の事業所として使っていた場合、特定事業用宅地とみなされ、400平方メートルまでは税額がやはり80%減となる。
たとえば、面積が400㎡で、評価額8,000万円の住居があったとする。この時1平方メートルあたりの価値は20万円であるが、課税の際は330㎡までは80%減の値段(4万円/㎡)で評価されるため、実質的な課税額は、次のように計算する。
4×330+(400-330)×20=2,720万円
つまり、法定相続人がいれば、他に2,000万円財産があっても課税対象とはならないのだ。
②生命保険・死亡退職金の控除…(受け取る法定相続人の数)×500万円は非課税。 控除の対象となるのはあくまで「法定」相続人であって、たとえば受取人が先妻の子で、配偶者とその子が存命である場合、法定相続人は後者二人であるため控除の対象外となる(とはいえ、多くのご家庭では生命保険金等は家族が受取人となっていると思うので、あまり気に病む必要はない)。
③配偶者の税額控除…配偶者が相続する場合、1億6千万円または法定相続分は非課税。 つまり、法定相続分の範囲であれば、どんなに多く受け取っても配偶者は税金を払う必要はない。
④未成年者・障害者の税額控除 法定相続人が未成年の場合…(20-相続開始時の年齢)×6万円は非課税。 そのため、7歳5カ月(≒8歳)の子供が相続するなら、(20-12)×6=48万円は非課税
法定相続人が障害者の場合…(70-相続開始時の年齢)×6万円(特別障害者は12万円)が非課税。
⑤葬式費用の控除…葬儀料・戒名料・お布施代・火葬(埋葬)料・通夜代などは税金がかからない(ただし、墓地の購入費や香典返しの費用は控除が認められない)。
この他にも、相次相続の控除(10年以内に続けて相続する際の控除)、海外の財産を相続したときの外国税額の控除など、利用頻度は少ないながら控除の特例はいくつもある。 もちろん、被相続人の負債が非課税なのは、ご承知の通りだ。
こうした特例を有効活用すれば、たとえ額面上は基礎控除額を超えていたとしても、税金を払う必要はなくなるだろう。
「こんなときどうする?よくある相続の悩み③」
さて、相続税はかからずとも相続にはかかわることになるため、相続財産について把握しておくことは必須だ。
代表的な相続財産の一つの不動産があるが、これをどう分ければよいのか頭を悩ませる方が少なくない。
というのも、現金や、換金しやすい株式などとは異なり不動産はお金に換えがたく、しかも平等に分けるのも難しい。
たとえば、二階建ての家を一回は配偶者、二階が子供が相続する、つまり共有名義としたら、売り渡す時に二人が合意しなくてはならず、もめることになるかもしれない。
また、一部の相続人が持ち家に住み続けるとしたら、他の相続人には不動産に代わる財産を譲らなくては不公平になるが、何千万円という価値のある不動産に代わる財産を渡す準備が相続人にあるかどうか……など、悩みは尽きない。

では、この厄介な財産をどう分けるか。
第一に、現物分割という手がある。
これは不動産を長男が継ぎ、次男は預貯金、長女は有価証券をもらうといったように、一部の人間が不動産を相続、金銭に換算可能な残りの財産を他の相続人で分けるというものだ。
こうすれば、実家を残しておける上に管理は誰が引き受けるかでもめることも少ないだろう。
ただ、不動産がそれ以外の財産の価値を上回ることが多く、他の相続人を納得させる必要は出てくる。
次に、換価分割というのをご存じだろうか。
これは相続財産をすべて売却してお金に換え、相続人に平等に分ける方法で、これなら相続人の間で争いが巻き起こることは少ない。
実家を手放すことに遺族の葛藤はないか、不動産を売りに出したとしてすぐに買い手がつくかというハードルをクリアすれば、きわめて有効な解決策だ。
また、丸く収める方法としてしばしば推奨されるのは代償分割という手段。
たとえば、長男が3,000万円相当の実家を継ぐ代わりに次男に2,000万円、長女に1,000万円渡すというのがこれにあたる。
この方法を使えば、実家を手放すことなく、しかも財産を比較的平等に分けられえるという強みがある。
しかし、不動産を相続する人間に、この価値に見合うだけの現金を準備できるかどうかが難点だ。 以上三つの方法は一長一短があり、どれが正しいということはない。
まずは遺族で話し合い、各人の意向をくみ取ったうえでどの手段をとるのかを決めるのが最も妥当な解決策だろう。
「こんなときどうする?よくある相続の悩み④」
前回は不動産の分け方について紹介したが、実際不動産を相続したとなると、次の手続きが待っている。その名義変更(相続登記)だ。
相続登記は法務局でできるが、それぞれの局には管轄があり、管轄を間違えてしまうと手続きができないので注意しよう。
相続したい不動産が管轄なのはどの法務局なのかは、法務局のホームページで確認することができる。

手続に当たって、まず次の書類等を準備することになる。

1.地番・家屋番号…相続したい不動産について問い合わせるときに必要。
この情報は、固定資産税納税通知書(毎年五月ごろ役所から送られてくる)、不動産の権利証、登記識別情報通知書、登記事項証明書などに記載されている。
もしこれら書類がいずれも見当たらないときは、名寄帳(なよせちょう)を市区町村役場から取り寄せることでも地番や家屋番号はわかる。

名寄せ帳をもらうには、

故人の戸籍謄本
請求者と故人のつながりを示す戸籍謄本
請求者の身分証明書(運転免許証、パスポートなど)
が必要だ。

※戸籍謄本の入手法…年金や保険金請求で必要な戸籍は、被相続人が死亡したことが分かる最新の戸籍謄本のみ。
ただし、不動産や預貯金などの相続手続きでは被相続人の出生から死亡時までの連続したものが必要で、婚姻などで遺族が戸籍から外れたことを証明
する除籍謄本等、その他の戸籍が求められる。

これら戸籍謄本は、故人の本籍地を管轄する役所で「相続手続きで使うので、被相続人についてのさかのぼった戸籍を出して下さい」と請求すればすべて取り寄せてもらえる。

2.登記事項証明書の取得…登記事項証明書には、その不動産の場所や面積、所有者など

が記されている。これは全国どこの法務局でも受け取ることができ、交付申請書を窓口で入手、提出しよう。

証明書を手に入れたら「「権利者その他の事項」を見て、所有者がたしかに故人かどうかを確認したい。
既に人手に渡っていた、ということもあるためだ。

3.住民票の写し・印鑑証明書を取得…相続登記を申請するには、新しく所有者となる方の住民票と印鑑証明書が必要だ。
どちらも市区町村役場の窓口でその日に入手できる。

4.固定資産評価証明書の取得…登記申請の手数料は不動産の価額によって異なるため、その価値を証明する書類が必要だ。
これは不動産のある市区町村役場で取得でき、その際次の書類を求められる。

申請書(窓口でもらうか、役場のホームページからダウンロードする)

請求者と故人のつながりを示す戸籍謄本
請求者の身分証明書(運転免許証、パスポートなど)

1~4までが完了したら、次は作成が必要な書類に取り掛かります。
5.遺産分割協議書の作成…「遺産分割協議書」の作り方はこちら。

7.登記申請書の作成…A4用紙にワープロ書きするのが基本。

登記申請書の記入項目は次の通り。

①登記の目的…相続する不動産を故人が一人で所有していた場合は「所有権移転」、二人以上で共有していたら「○○(故人の名)持ち分全部移転」と記入。

②原因…「年月日(故人の命日)」を記入のうえ、「相続」と書く。

③相続人…故人の氏名をカッコでくくって「(故人の名)」というように書き、その下に所有権を相続する人の住所氏名を記載します。なお、住所は「1-2-3」などと省略せず、「一丁目2番3号」というように丁目は漢字、番地と号数は算用数字で記入しなくてはならない。

④住民票コード…住民票に記載されているコードを記入する。

⑤申請日と管轄

⑥課税価格…固定資産評価証明書の金額の、1,000円未満を切り捨てた金額を記入。

⑦登録免許税…課税価格×0.4(1,000円未満は切り捨て)を記入。

スムーズに進むと名義変更は1ヵ月ほどで済むが、取り寄せる情報が多くなればなるほど、当然期間を要する。手続き内容の量や慣れない作業のため、相続手続きのプロである司法書士に頼むのがよいだろう。
「こんなときどうする?よくある相続の悩み⑤」
最後に、預金凍結の解除方法についても一言しておこう。
銀行に口座を持つ人が亡くなると、その名義の銀行口座は凍結されてしまい、出入金ができなくなる。
これは預金者の財産を保護し、第三者が勝手に故人の財産を侵さないようにするためだ。
だが、これで困るのは二心のない遺族であり、葬儀費用などの捻出に苦慮するだけではなく、親が銀行口座から自動引き落としの手続きをしていた水道、電気、ガス、新聞、電話などの料金が引き落としできなるため料金支払いも滞ることになる。
放っておくと、故人の家の電気、水道、ガスなどは止められてしまう。
もちろん、各事業者に連絡し、引き落とし口座を変更してもらうなどの手続きを取ってもよい。
しかし、水道料金、ガス料金など公共料金の払い込み先は多岐にわたるため、いちいちこのような手続きをしていては、らちが明かない。
そこで、預金口座を早めに凍結解除するのが上策と思われる。
これには、銀行で預金の相続手続きを行う必要がある。
手続きにあたっては、病院で受け取る死亡証明書、銀行の通帳と届出印、役所で受け取る親の住民票の除票(死亡の事実が記されたもの、つまり故人が亡くなった後手に入る住民票)、戸籍、などが必要だ。
ただし、ほかにも必要書類が求められることがあるので、詳細は各金融機関に問い合わせてほしい。

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