相続財産

大塚家具の騒動――株式譲渡が争点、だけど…

大塚家具の後継者・経営方針を巡る親子バトルが注目を集めている。
今回の争いを招いたのは、会長である勝久氏の株式譲渡の仕方だというが、果たしてそれだけに尽きるのだろうか。
まずは問題となっている譲渡の内容を確認し、それから事業継承の望ましいあり方について一考しよう。

2007年にインサイダー取引容疑で同社が課徴金を課されたことを受けて当時社長であった勝久氏は社長の地位を後継に譲ることを真剣に考えるようになる。
長男の勝之氏が疎遠であったことから長女の久美子氏に白羽の矢が立ったのだが、継承に当たって彼女はいくつかの条件を付けた。
その一つが事業継承だ。
先の事件の前、勝久氏は自社株の約二割を保有していたが、同氏が亡くなったときこの株は遺族(妻と五人の子供)が相続し、結果大塚家具の株は四散してしまうことになる。
そうなれば、大塚家が経営権を喪失してしまうことは避けられない。
そこで、久美子氏は持ち株を子供に移しておいてはどうかと提案したのだ。
父は合意し、自分が持っていた資産管理会社の株式を子供に二割弱ずつ、妻に約一割を配分した。
次に会長は資産管理会社に自社株の一部を買い取らせたのだが、その際買い手が資金不足により社債を発行し、勝久氏が引き受けた。
自社株を売り、その代金を自分で引き受けた格好だ。
さて、彼はこの社債の償還を娘に求めたが、後者の言い分では、株式の買い取りはそもそも事業承継を目的としたスキームであって、償却期間が来たら再契約することが前提だったとのことで、償却を拒んだ。
そこで勝久氏は久美子氏を訴え、持ち株譲渡を打ち切ったのだ。
事業継承の際、自社株をどう処理するかが大きなポイントとなるのは言うまでもない。
自社株は単なる財産ではなく、シェアの大きい人物は経営権を握ることになり、まさしく会社に関して生殺与奪の権を掌握することができる。

しかし、真に問われるべきは、結果として株がどう配分されたのかというより、むしろ当事者はそれぞれどのような譲渡を企図していたのか、コンセンサスはとれていたのかということではないか。
今回の騒動を子細に調べてゆくと、親子の間には意見の祖語があったことがうかがわれる。
特に、親子の次の応酬は興味深い。勝久氏が娘は聞く耳持たないと不満をこぼす一方、久美子氏は自分の考えは繰り返し説明してきたのに、理解してもらえないのは残念だと発言しているのだ。

ここに、問題の根源が潜んでいるように思われる。
勝久氏と久美子氏の間には、経営方針の違いをはじめ、意見の対立が目立つ。
それを埋めるとともに、株式譲渡にかかる社債の処理を含め、事業承継のコストをどう分けるかについて合意を図るという努力が、両者には十分ではなかったことも今回の対立を招いた一因ではないか。

後継者の選定には、こうすればよいという定石はなく、企業の状況や後継者と先任者の意思、今後の動向など複数の要素を勘案し、総合的に判断するしかない。
だが、企業の存続を願うのであれば、現経営者と後継者は見解を明示し、互いに納得し合うことはもちろん、従業員の意見も聞きつつ理解を得ることが不可欠だ。
組織の命運にかかわる人間が、完全な同意は難しくても意見を衝突させつつ研磨させ、すり合わせながらある程度の一致をみなければその組織は立ち行かなくなる。
したがって、事業承継を考える際には、会社の資産をどう処理するかを問うほかに、そもそも当事者はどう考えているのかを伝えあうという作業も決しておろそかにしてはならない。

これまで繰り返し述べてきたように、通常の相続がもめる最大の原因のひとつは、財産が分けにくいことや財産額が少ないことのほかに、遺族間のコミュニケーションが不十分なことがある。
事業継承についてもそれが言える。
相続する側とされる側、そして事業を継承する側もされる側も人間である以上、意見の対立は避けられない。
それを解消するために歩み寄りをしなくては、円満な相続は望みえない。

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